2012年08月31日

砂の器

『原作をなぞるな、小説に負ける。作家が書ききれていない部分を膨らませろ。』
制作が始まったある日、野村芳太郎監督は脚本担当の橋本忍に指示を出した。

彼は何度も読み返し、原作ではほんの数行だった、犯人・和賀英良が幼い頃に父親
と全国を放浪するエピソードに目をつける。
ハンセン病の父と息子は村を追われ、全国を放浪する。行く先々で差別を受け、
石を投げつけられる。
それでも二人は体を寄せ合って旅を続ける。
和賀の犯行であることを説明する捜査会議に挿入されるこのシーンが、本作を
日本映画屈指の名作に押し上げた。

実をいうと、僕は日々の設計業務の中でこの手法を使っている。

以前ブログに書いたフレッセの設計競技を例にとると、要望事項をそのままプランニング
するとうまくまとまらず、つまらない案しか浮かばなかった。
そこで最後の方で申し訳なさそうに列記されていた、職員のための小さな会議室
に注目した。
ここを一番日当たりの良い、施設の顔ともいうべき正面に計画した。
すると、今まで考えたこともない風景が出現したのである。

この橋本忍が挑戦した課題に対するアプローチ方法を、僕は砂の器メソッドと呼んでいる。
(ちょっとカッコよすぎる?)
広く応用のきく手法だと思うのだが、どうだろうか。

砂の器.jpg
和賀役を加藤剛が演じたものだから、最後まで憎めなかった。




posted by @せ at 21:48| Comment(0) | 映画だっ! | 更新情報をチェックする

外観がイカンでは困る

前回も書いたが、外壁を決める際の基準としているのは雀の色である。
白 ・黒■・灰・茶の4種類で、これから選択すれば街並みの中で違和感のない外観に
なると考えている。

また、僕の設計は箱型が多いとよく言われるが、それにも理由がある。
◆建築費のなかで外壁の占める割合はかなり大きい。
 そこで少しでも予算を他に振り分けようと考えると箱型になる。
 他の屋根形よりも外壁面積が小さくなるからだ。

◆箱型にすると、屋根材が問題になる。
 以前は屋根の途中で継がねばならず、雨漏りの原因になっていた。
 しかし、現代の技術だと10m程度であれば一枚の金属板で屋根を葺くことが可能だ。
 雨漏りの不安から解放されたのも大きな理由である。

◆周囲の家と同等か小さめの箱をデザインすることで、街並みから突出しないようにする。
 インドでは周りの樹木よりも、家を高くしないようにするらしい。
 人間は自然の中で生かせてもらっているんだという意識なのだろう。
 日本や欧米では建築は欲望の具現化になる。少しでも他より大きくすることを是とする。
 ニューヨークのWTC跡地には国際コンペの結果、以前よりも背の高いビル案が選ばれている。

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黒:ガルバリウム鋼板・白:鉄板

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黒:ガルバリウム鋼板・白:塗り材

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灰:コンクリート・茶:塗り材、木

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黒:ガルバリウム鋼板・白:塗り材

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白:塗装・茶:木材

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白:サイディング

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和のデザイン。軒を出来るだけ深く出す。
茶:塗り材、木材

posted by @せ at 15:14| Comment(0) | 建築設計あれこれ | 更新情報をチェックする

2012年08月30日

建築と緑

著名な建築家の本に書いてあった、
『下手なデザインをするくらいなら、樹を植えろ!』
これほど真理をついた的確なアドヴァイスはない。
樹木が一本あるだけで、建物が俄然魅力的になる。

かつて、江戸っ子は雀の色で着物を誂えることを粋とした。
雀の色とは、白 ・黒■・灰・茶の4種類。
これを僕が外壁の色を決める際の基準としている。
この色を選んでおけば街並みの中で突出しない、良質な建築になると思っている。
白は塗り壁あるいはサイディング・黒はガルバリウム鋼板・灰はコンクリート・茶は塗り壁か板貼りである。
当然多くの外壁は無彩色ということになる。そこで、色味が欲しい場合は樹木でそれを補うことにしている。

たしかに樹木は、虫はつく・藪蚊が発生する・雑草は生える・剪定が必要等、手間がかかるので植えたくないという人も多い。
だが、街並みに与える影響も大きく、並木道や木々の生い茂った住宅街が心に安らぎをもたらすのも事実である。

小津安二郎と笠智衆・溝口健二と田中絹代・山田洋次と渥美清・M=スコセッシとデ・ニーロ・
デ=シーカとS=ローレンのように、
建築と緑は切っても切れない仲なのだ。

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竣工直後のA法律事務所。

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数ヵ月後。建築に与える影響を分かっていただけるだろうか。


posted by @せ at 22:08| Comment(0) | 建築設計あれこれ | 更新情報をチェックする