無名の若者たちの、なんとか這い上がりたい、メジャーになりたいという欲望と情熱がこの映画を
成功に導いたのだと思う。
30才になってもロクな役が貰えないS・スタローンは、ひたすら脚本を書いては製作会社に持ち込む
焦燥の日々を送っていた。
そんなある日、テレビで観たC・ウェップナーと世界チャンピオン・モハメド・アリの試合に感動し、
3日で本作を書き上げる。
出演させなければ脚本を売らない、とプロデューサーに詰め寄り、ついに主役の座を射止める。
監督はポルノ映画出身のジョン・G・アヴィルドセン、殆どのスタッフ・キャストが無名の若者だった。
全篇ロケ撮影となったのは、低予算でセットを組めなかったためだ。
クライマックスシーンの試合会場のエキストラとして、ホームレス達をフライドチキン1個を餌に
かき集めた。
しかし、いつ暴動が起きるか分からないので、撮影に時間をかける訳にいかない。
だんだん腫れ上がっていくスタローンの顔をメイクしている余裕はない。
悩んだ挙句、15ラウンドから撮り始めることにした。つまりメイクを徐々に剥がしていくことで、
時間を短縮するというものだった。見事にこのアイデアは功を奏し、映画は完成した。
そして、作品賞を含む3部門でオスカーを獲得する。
まさに無名の若者たちが、ロッキーが逃した‘勝利’を手にした瞬間だった。
