
フランク・ロイド・ライトはル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエと『近代建築の三大巨匠』と
呼ばれる。
幼い頃に母親の英才教育によって、その天才的な造形力を身につけたと言われている。
若くして売れっ子建築家となり名声をものにしていたが、40過ぎの頃に妻子を捨てて施主の奥さんである
チェニー夫人とヨーロッパへの駆け落ちを決行する。
2年後に帰国するが、そのスキャンダルによって仕事は激減し、さらに追い討ちをかけるように事件が起きる。気の狂れた使用人がチェニー夫人と子供、弟子達を斧で惨殺し、自ら服毒自殺をしたのだ。
失意のうちに日本で帝国ホテルの設計に携わるが、最後まで見届けずに帰国してしまう。
そんな後半生の中で生み出されたのが、世界建築史に燦然と輝く『落水荘』である。
その時はすでに60代後半となっていた。
施主は滝の見える場所に建てたいと思っていたが、ライトは滝の上を選ぶ。
岩盤がそのまま室内に露出するが、それがかえって野趣味のある面白い空間を創り出している。
外観はバルコニーなどの水平要素を白のペンキ塗りとして、壁の垂直要素を石張りとした。
このように要素を分節化することで、自然の中で凛とした風格を演出している。
まさに建築の矜持を見る思いである。