『キンベル美術館』 ルイス・I・カーン設計

30歳の頃だろうか、この建物をどうしても見たくて、アメリカへと2ヶ月間の貧乏旅行を試みた。
その頃の僕は勤めていた会社を辞め、全く未知の世界である建築を志して大学院の学生となっていた。
テキサス州フォートワースに位置する世界建築史に残る傑作は、雑誌で見る以上の感動を与えてくれた。
こんな美しい空間があるのだろうかと、言葉を失った。
開館直後に入って、気が付くと閉館の時間になっていた。昼飯を食うのも忘れていた。
ボールト天井の頂部に、建物の長さ方向にトップライト(天窓)が切ってあり、そこから降ってくる光を
R加工したアルミのパンチング板が受けている。
それに反射してコンクリートの天井を照らす光、無数の穴からこぼれ落ちてフロアを照らす光。
時間の移ろいにつれて、光の粒は様相を変え、全く飽きることがない。
‘建築は光である’というカーンの言葉が実感出来る究極の作品である。