2012年08月03日

ワンルームを考える

ある評論家が『建築家はワンルームにおいて記憶される』と言ったことがある。それほどワンルームの住宅は設計士にとって魅力的な仕事である。ミースがファンズワース邸を造ったときから世界中の建築家はそれに憧れ挑戦し続けている。しかし成功している例をあまり見かけない。最小単位の家族(単身あるいは夫婦)ならば成立するかも知れないが、家族が増えるとプライバシーの数だけ壁が増え、部屋は細分化していく。ワンルームとは逆の方向に行ってしまう。それでも魔力にとりつかれた者たちはあくなき戦いを続けている。そして私もその一人だ。

ワンルームは平面的に計画するのが常道だが制約上無理な場合、縦方向に空間を一体化することで解決を図ることもある。昨年竣工した住宅は夫婦と子供(男子二人)の住まいで、話を進めていく上でこの御家族には定型型のプラン(1階にLDK、2階に個室がずらーっと並ぶタイプ)ではうまく機能しないことが分かってきた。そこで1階に寝室、居間、2階にDK、中2階に子供室という構成にし、寝室・水回り以外は全てスキップフロアで縦に繋がるよう計画した。子供室は成長に合わせて家具で仕切ることが出来るが、決して個室にはならない。居心地を悪くすることで、居間やDKで過ごす時間が多くなる。
家族の時間を少しでも増やすためのワンルーム住宅である。

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写真奥のオープンな子供室と吹抜のDKが繋がっている。子供室の下には居間がある。スキップフロアで一体化している。一番手前はロフトの納戸。

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居間からDK方向を見る。




posted by @せ at 14:19| Comment(0) | 住宅設計あれこれ | 更新情報をチェックする
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