建築費を下げるために外材を使用する。
経済原理から県産材がますます高くなる。
簡単に言うと、これが日本の林業界の現状である。
自治体は地元の林業を守るため、地場産の木材を使うことを奨励し住宅等には補助金で援助している。
昨年竣工した全徳島建設労働組合(フレッセ)会館は設計競技だった。
設計条件の中に、県産杉の使用を義務付ける項目があった。
そのまま読み込めば構造を木造とし、柱・梁等に杉材を使用するのが常道だろう。
しかし100人を収容する大会議室を内包している事を考えれば、木造よりも鉄骨造の方がコストが
安くなると判断し、杉を仕上材として活かすことにした。
しかし杉を仕上材として使用するのは、はなはだ難しい。
扱いを間違えると ‘うどん屋’ になってしまうのだ。
新会館は組合員や職員の方々が誇りに思えるような、モダンでお洒落なものしたかった。
そこで、壁一面に角材を張り、外部と内部が連続するような広がりのあるデザインを考えた。
シンプルなディテールが素材の持ち味を最大限引き出し、空間の独自性を高めている。
県産杉の新たな使い方を提案出来たと思っている。

正面左側の壁に杉角材を張っている。それが内部まで連続していく。
外から内へ、内から外へと杉材が視線を誘導し、広がりを演出する。
黒い壁はポスター用掲示板で、天然ゴムを貼っている。