『下手なデザインをするくらいなら、樹を植えろ!』
これほど真理をついた的確なアドヴァイスはない。
樹木が一本あるだけで、建物が俄然魅力的になる。
かつて、江戸っ子は雀の色で着物を誂えることを粋とした。
雀の色とは、白 ・黒■・灰■・茶■の4種類。
これを僕が外壁の色を決める際の基準としている。
この色を選んでおけば街並みの中で突出しない、良質な建築になると思っている。
白は塗り壁あるいはサイディング・黒はガルバリウム鋼板・灰はコンクリート・茶は塗り壁か板貼りである。
当然多くの外壁は無彩色ということになる。そこで、色味が欲しい場合は樹木でそれを補うことにしている。
たしかに樹木は、虫はつく・藪蚊が発生する・雑草は生える・剪定が必要等、手間がかかるので植えたくないという人も多い。
だが、街並みに与える影響も大きく、並木道や木々の生い茂った住宅街が心に安らぎをもたらすのも事実である。
小津安二郎と笠智衆・溝口健二と田中絹代・山田洋次と渥美清・M=スコセッシとデ・ニーロ・
デ=シーカとS=ローレンのように、
建築と緑は切っても切れない仲なのだ。

竣工直後のA法律事務所。

数ヵ月後。建築に与える影響を分かっていただけるだろうか。