映写室にも入れてもらい、小窓からスクリーンを覗いた記憶もある。
僕が子供の頃はまだ映画が娯楽の中心で、いつも館内は満員だった。
東映系の邦画を上映していたので、時代劇とやくざ物を常に観ていたと思う。
年に何回か、俳優さん達が祖父の家に挨拶に来ることもあって、
加藤大介、沢村貞子、三田佳子、佐久間良子等のスターを眼前にした。
特に佐久間良子の美しさは格別で、子供心にこんな美人が世の中にいるものかと
驚愕した記憶がある。
この作品を観ると、いつもその頃の記憶が蘇ってくる。
当時の人々にとって映画はまさに‘夢’だった。
その辺りの雰囲気がうまく描かれている。
著名な映画監督が30年振りに故郷へ帰ってくるところから話は始まる。
年は離れてはいるが、親友の映写技師が亡くなったのだ。
子供のころに入り浸っていた映画館の解体にも遭遇する。
昔の二人のエピソードを中心に展開し、恋もからんでくる。
そしてラストシーンは何度観ても感動する秀逸さだ。
