貴族出身ということもあって、L・ヴィスコンティはその栄光と没落を執拗に描き続けた。
僕にはその作風が冗長で退屈でしかなかった。『ベニスに死す』を観るまでは。
静養のためベニスを訪れた老作曲家アッシェンバッハは、その道中で出会った少年・タジオに
理想の美を見出す。
芸術とは、論理に裏打ちされた知性によるものだと彼は考えている。
しかし、その美しい少年に理屈を超えた愛情を抱いてしまう。
髪を染め、化粧を施してタジオを求め彷徨う姿は、哀れで悲しい。
そして伝染病に罹かり、化粧が醜く剥げ落ちた彼は海辺のデッキチェアで息絶える。
テーマ曲であるマーラーの五番・第四楽章とタジオ役のビョルン・アンドレセンが美しい。
映画が娯楽を超え、芸術の域に達したと思える作品である。

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