2012年11月13日

監督は最後に何を撮ったのか。 その2


小津安二郎 『秋刀魚の味』
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これほどまでに自分のスタイルを貫いた作家も珍しい。ストーリーがすぐに浮かばないほど、作品はどれも似通っている。
A・モディリアーニの絵画はどれも同じように見えるが、ひとつひとつ違っていてそれぞれ魅力に溢れいている。被写体の内面が写し出されているから、決して同じものはないのだ。
小津も同様である。家族にまつわるテーマを、飽きもせず何度も映像化している。そして人々の心を捉えて離さない。
遺作となった本作品も、娘の縁談というたいしたドラマ性もないテーマだが、小津らしさが隅々まで発揮されている。そしていつも思うのだが、日本人の美しさ、特に言葉の美しさが存分に描かれている。
若い頃は‘小津’というだけで敬遠していた。保守的で新鮮味がなく、細々とした日常を描くだけの私小説的な作りがうんざりだった。
だが、小津の世界にいつの間にか共感していることに気付く。
それがいつなのかは思い出せないが、とにかくどっぷりと浸ってしまった自分がそこにいるのだ。



posted by @せ at 22:22| Comment(0) | 映画だっ! | 更新情報をチェックする
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