2012年10月30日

どんでん返しの名画たち その7

『殺しのドレス』
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A・ヒチコックを敬愛してやまないブライアン・デ・パルマが、『サイコ』のオマージュとして撮った作品である。全篇、ヒチコックを彷彿とさせる場面が次々と流れ、ファンとしては堪らない興奮を覚える。

ある中年女性が、美術館で知り合った行きずりの男と彼のアパートで情事に耽る。
何気なく開けた引き出しから、男が性病であることを診断した書類が出てくる。
逃げるように部屋を出ていく彼女。
だが指輪を忘れたことに気付き慌ててエレベータに乗り込むが、扉が開いた瞬間彼女は何者かにナイフで
惨殺される。

このようにショッキングな出だしで始まり、ラストはどんでん返しで終わる。
ブライアン・デ・パルマは出来・不出来が極端な監督で、これは結構いい出来だと思う。
『アンタッチャブル』のような大作ではないが、氏のセンスの良さが存分に発揮された作品である。



posted by @せ at 21:14| Comment(0) | 映画だっ! | 更新情報をチェックする

2012年10月29日

園子温

‘そのしおん’と読む。今をときめく日本映画界の寵児である。
『冷たい熱帯魚』『恋の罪』『ヒミズ』と立て続けにDVDを観た。
一言で言うなら、どうしようもなく重く陰湿で、不快な映画である。
だが、暫く経つともう一度観たくなってしまうのだ。

前2作は実際にあった事件を題材に、暴力・セックス・殺人が横行する。
『ヒミズ』は東日本大震災後の東北を舞台に、父を殺す中学生の話である。
どれも色調は暗く、監督の心象風景を映し出しているようにさえ思える。

そして、俳優たちが輝いている。特に
『冷たい熱帯魚』のでんでん、『恋の罪』の冨樫 真、『ヒミズ』の 染谷将太と 二階堂ふみ。
どういう演出をするのか、覗いてみたい気持ちにかられる。

時代の断面をどう切り取るか、作家によって様々である。
周防正行は実際の事件を念入りに調査し、忠実に脚本化するという方法論をとっているように思う。
園子温もそれを元に創作するが、もはや原型をとどめてはいない。
彼の創り出すものは悪意と毒に満ちた一篇の詩である。

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posted by @せ at 22:28| Comment(0) | 映画だっ! | 更新情報をチェックする

終の信託

周防正行監督最新作『終の信託』を観てきた。
前作『それでも僕はやってない』から、ついに社会派になってしまった。
クロサワといい、巨匠と言われるようになるとこういう作品を作りたくなるのだろうか。
『ファンシーダンス』では現代っ子とお寺、『シコふんじゃった』は若者と相撲、
『Shall we ダンス?』はサラリーマンと社交ダンスという、ミスマッチの生み出す軋轢とズレを巧みに笑いと感動に昇華させていた。
モダンで軽妙洒脱な若き才能の出現に拍手を送ったものだが、『それでも・・・』と今回の作品はそれらとは全く無縁の世界が広がるばかりだ。
監督お得意の念入りな取材に基づく現代的なテーマを扱っているにも拘らず、他人事の域を出ず感情移入もしかねるのは何故だろうか。

『Shall we ダンス?』を観た後、この監督はどこまでの高みに僕たちを連れて行ってくれるのかと期待をしたが、どうやら別の電車に乗ってしまったみたいだ。
誰かもう一度かつての路線に連れ戻してはくれないだろうか。

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posted by @せ at 01:39| Comment(0) | 映画だっ! | 更新情報をチェックする