2012年10月08日

扉はどちらに開けるのか


別れた男が入らないよう、女が泣きながら背中でドアを押し返しすというような映画のシーンに
よく出会う。
このように、欧米ではプライバシーを守るために内開きが多いようだ。

日本では、扉をどちらに開けるかはその部屋の用途に関係してくる。

玄関扉の場合だと、内開きにすると玄関が狭いので靴を引き摺る可能性がある。
また雨仕舞いという観点からも、外開きが多い。

一般室の場合は内開きでも構わないが、最近のバリアフリーの観点からすれば、
引戸が良いだろう。
内開きの場合、手前に体をかわす空間がなければ一度下がって開く動作に入る。
これがお年寄りには苦痛を伴うことになる。

便所の扉は引戸か、外開き、または引込み戸になる。
もし中で倒れるとドアを開けることが出来ないので内開きは止めた方が良い。

扉のデザインはコストにも関係し、また空間の質も左右するので、扉の開け方は総合的に
考えることが必要だ。

2.jpg
正面の引戸の奥は土間になっていて、玄関から庭へと通じている。

1.JPG
外開きの便所。

3.jpg
引込み戸の便所。扉の真ん中が折れるようになっていて、スペースをとらないで済む。

5.jpg
ユーティリティの扉を引戸とした。






posted by @せ at 21:34| Comment(0) | 住宅設計あれこれ | 更新情報をチェックする

2012年09月15日

寝室は別々がいいのか

若い頃は同じ部屋で寝ていたが、これからは別々に休みたいと仰る中年のご夫婦が増えている。
理由としては
夫の鼾がうるさい・寝る時ぐらい一人になりたい・寝る時まで夫の世話をしたくないという切実なものから
就寝時間のズレ等の生活習慣の違いによるもの、
気兼ねなく本を読みたい・音楽を聴きたい・テレビを見たい等の趣味によるものなど様々である。
ただ誤解しないでいただきたいのは、別寝室にするからといって仲が悪い訳ではない。

そしてプランニング上大切なことは将来、介護という問題が発生する可能性があるので
いつでもワンルームに戻せるようにすることだ。
それぞれの部屋を家具等で仕切って、いつでも撤去出来るようにする。

もちろん、同じ部屋で就寝したいという方達もいる。
同じ部屋に人のぬくもりや気配があることが安心につながるという。
夫婦は加齢とともに過ごし方が変わるのは当たり前で、
寝室を別にするかどうかは、その変化の中で柔軟に考えればいいのではないだろうか。

s-IMG_0176.JPG
中庭に面したご主人の部屋。

s-IMG_0167.JPG
左側のクローゼットを撤去すれば奥様の部屋と一体化する。書斎を組み込んだご主人の部屋。

s-IMG_0171.JPG
右側のクローゼットを撤去すればワンルームになる、奥様の部屋。

posted by @せ at 16:05| Comment(0) | 住宅設計あれこれ | 更新情報をチェックする

2012年09月14日

なぜタコ社長は‘とらや’の座敷に上がらないのか

昔は襖や障子という軽い建具で各部屋が仕切られていた。
厚い壁で区切られるということはあまりなく、
プライバシーはそういった頼りない境界によって守られていた。
部屋内を見えない、聞こえないものとして行動していた。
つまりそこに壁があるものとして振舞っていた。
これがかつての日本人のメンタリティーであり、美徳である。
欧米の合理主義にはこのような発想はないと思う。

全くの一室空間でありながら、境界が自然発生することもある。
例えば、『男はつらいよ』シリーズでタコ社長は、
‘とらや’の裏に自分の経営する印刷工場があるので、頻繁にやって来る。
しかし、上り框に腰はかけるが、座敷には上がらない。
そこは‘とらや’のプライベート空間だという認識があるからだ。
いくら親しくても越してはならない境界があるという心理的な仕切である。
目には見えない境界というのは確実に存在する。

この日本人特有の精神性を理解し探求出来れば、もっといい住まいを
設計出来るのではないかと思うのだが・・。

tako3.jpg
決して自ら座敷には上がらないタコ社長。




posted by @せ at 17:16| Comment(0) | 住宅設計あれこれ | 更新情報をチェックする