2012年12月29日

私のお気に入り  世界の名建築篇 その8

『カップマルタンの休暇小屋』ル・コルビュジェ設計
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南仏の海の見える小高い丘に建てられた、わずか8畳ほどの建物である。
トイレと小さなベッド、机があるだけの質素な空間である。食事は隣のレストランでとっていた。
慎重に計算されて穿たれた窓から海が見える。
この茶室のように極限まで無駄を排除した仕事部屋が、自宅を持たなかった彼の終の棲家となった。
ここで世界中の都市と建築を構想していたに違いない。
だが78歳の時、前の海で海水浴中に心臓発作で死去する。

こんな仕事部屋を欲しいと思うが、いまだ実現できずにいる。
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posted by @せ at 01:19| Comment(0) | 建築設計あれこれ | 更新情報をチェックする

2012年11月21日

私のお気に入り  世界の名建築篇 その7


『グッゲンハイム美術館』 F・L・ライト設計
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アメリカ旅行のもう一つの目的は、ライトの作品を見ることであった。
ニューヨークにある、氏の代表作の美術館は雑誌で見る限り魅力に溢れた傑作に思えた。
だが、現物には失望してしまった。
確かに遠目には美しいのだが、施工の精度があまりにも低いので、ディテールは見るに耐えない。

日本のゼネコンでは絶対に有り得ないような拙劣な工事で、アメリカの建設事情が想像出来た。
壁の塗装はダマがあったり、コーキングの幅が10cm近くあったり(防水のためのシールのことで、
日本だと2~2.5cm以下が目安である。)と折角のデザインが台無しになっていた。

完成度の高いキンベル美術館とは全く対極にあるような建築だと言えよう。
だが、それでもやはりライトの設計は目を瞠る引力があるのも確かである。

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入館者は最初エレベーターで最上階まで上がり、らせん状のスロープを降りながら作品を鑑賞する。
凄いアイデアだと思う。



posted by @せ at 22:23| Comment(0) | 建築設計あれこれ | 更新情報をチェックする

私のお気に入り  世界の名建築篇 その6

『キンベル美術館』 ルイス・I・カーン設計 
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30歳の頃だろうか、この建物をどうしても見たくて、アメリカへと2ヶ月間の貧乏旅行を試みた。
その頃の僕は勤めていた会社を辞め、全く未知の世界である建築を志して大学院の学生となっていた。

テキサス州フォートワースに位置する世界建築史に残る傑作は、雑誌で見る以上の感動を与えてくれた。
こんな美しい空間があるのだろうかと、言葉を失った。
開館直後に入って、気が付くと閉館の時間になっていた。昼飯を食うのも忘れていた。

ボールト天井の頂部に、建物の長さ方向にトップライト(天窓)が切ってあり、そこから降ってくる光を
R加工したアルミのパンチング板が受けている。
それに反射してコンクリートの天井を照らす光、無数の穴からこぼれ落ちてフロアを照らす光。
時間の移ろいにつれて、光の粒は様相を変え、全く飽きることがない。
‘建築は光である’というカーンの言葉が実感出来る究極の作品である。

posted by @せ at 00:33| Comment(0) | 建築設計あれこれ | 更新情報をチェックする